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昨年のNHKの朝ドラ「あまちゃん」で、さらに、海女の大ブーム。テレビ画面でチラチラ流れる岩手の海を横目に、うむむむ……。なんといっても「北限の海女」。その海と海女の今を、自分の目で見たい、知りたい。……というわけで、2013年最後の素潜り実演の日程に合わせて、岩手県久慈市小袖海岸への取材旅行へ出かけることにした。kuji2013-02
行きは、沖縄から飛行機に乗って、東京駅から新幹線で移動。八戸駅から、青森〜岩手の海岸線を左手に見ながら電車で久慈駅に向かった。東日本大震災の後、全線復旧している八戸線でないと、その日のうちに宿まで着くことが出来ないからだ。ちなみに新幹線「盛岡」駅を降りて、太平洋側の「宮古駅」までバスで移動したとしても、「宮古駅」ー「久慈駅」間は、一部復旧しておらず、途中からバスを乗り継がないと行くことが出来ない。東日本大震災の傷跡は、あちこちに残っていた。kuji2013-03
翌朝、久慈駅からバスに乗って「北限の海女」のいる小袖海岸へ。車窓に広がる景色は、発達した海岸段丘に、北三陸ならではの奇岩や巨岩がゴロゴロと。切り立った断崖の海岸線と海に挟まれ、地球の壮大な営みを感じずにはいられない。kuji2013-04
久慈海岸道路は道幅が狭く、曲がりくねって 対向車に気を付けて進まなければとても危険な道だ。(あまちゃんブームで観光客が多い)土日祝は「マイカー禁止」(交通規制)となっていた。kuji2013-05
岩肌を打ち付ける大きく強い波。これで、本当に海に入れるのだろうか?kuji2013-06
ベテラン海女たちが、海況を見て「これならなんとかなりそうだ」と海入りを決めた。kuji2013-07
この夏の間に、だいぶ潜れるようになった、という新人海女(高校生海女クラブ)達も、この波ではさすがに潜れない。「例年の23倍!」という観光客相手に、素潜り実演のチケット販売、接客などに忙しそうだった。(2011年3月の巨大津波で破壊されて今年はプレハブでの仮設店舗で営業)kuji2013-08
防波堤を越えてくる波。大勢のお客さんに見守られ、彼女たちは海に向かう。kuji2013-09
「今日は何分、何回潜れるか、わかりませんが頑張ってみます!」潮の流れが強く、階段から降りることは出来ないので、反対側の崖を下り海に入る。kuji2013-10
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ニのいそうな場所へ水平移動。kuji2013-12
ウニを見つける。kuji2013-13
身体を丸めて、くるりと回転し、垂直に沈んでいく。両手両足を大きく広げて、ひとかき、ふたかき……。できるだけ少ない回数で海底まで辿り着くようにする、という。kuji2013-14
「はいっ!」ウニを見せると「うわぁ〜!」と歓声が上がる。kuji2013-15
潮の流れが悪いのか、対岸へ移動。kuji2013-16
心配そうに見守る観光客。kuji2013-17
波が強いので、海女たちは声をかけながら崖を横に移動した。kuji2013-18
その時、波が……。「あぁっ!!!」波にたたきつけられ転倒した海女に「もういいよ〜、戻っておいで〜」お客さんの誰かが言葉をこぼした。kuji2013-19
「はいっ!」海は時化ても見せてくれます、プロ根性!kuji2013-20
ウニなどの魚介類を潜って採っているところを観光客に見せたり、各種イベントに海女の格好をして参加しパフォーマンスを披露など、「観光海女」のアイドル的要素に対しては、漁民や一次産業に携わる人を応援してきた私としては、少し抵抗があったというのが本音です。……が、荒れた海を相手に、泳ぎ、潜りながらも、お客様へのサービス精神を旺盛に明るく振る舞う姿を見て、彼女たちはやはりプロだ、と実感。漁業操業は、年間に2日と少ないようだが、本気採りでの彼女たちの潜りと漁獲を拝見したいと思った。kuji2013-21
あまりに危険ということで、この回は、十数分の素潜り実演で終了。午後からはますます時化、この日は1回のみの披露となった。kuji2013-22
「あまちゃん発見!」kuji2013-23
次の日も、海はおさまらず、それでも増え続けるお客さん。今日はNHK朝ドラ「あまちゃん」の最終回の日だったのだ。kuji2013-24
素潜り実演は、通常1日3回。1回につき約30 分間。しかし、この日も、次々とやってくる団体客のために、ベテラン組は5回も海に入ることになった。kuji2013-25
「パチパチパチ〜ッ!」拍手喝采。kuji2013-26
大きく腕をかき、前へ進む海女さん。「手足を大きく掻いて進んだり潜ったり。だからここが筋肉痛になるのよ。」と、腕の後ろあたり指さしていった。kuji2013-27
ウニを海面から高くあげ、アピール。そのたびに観光客から拍手が湧く。kuji2013-28
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水深約6〜7メートルの潮の流れが速く冷たい海。一度潜るだけで体力をかなり消耗する。kuji2013-31
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海から上がるころには、階段を上れないほど足がフラフラだ。それでも、リーダーは(海に足を取られないように)完全に陸へ上がるまで気を緩めない。kuji2013-33
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頭から足先まで、海水にずぶ濡れの身体を冷たい北風がより凍えさす。それでも海女さん達は採りたてのウニをその場で割って見せてくれた。kuji2013-36
東日本大震災の後、海中の海藻も流され、それを食べるウニも激減してしまったのだろう、と言う。(以前は行っていた)試食はできませんが、代わりどうぞ!と、ステッカーを配っていた。kuji2013-37
じぇ、じぇ、じぇのウニ!kuji2013-38
ウニは銭。「1個500円(大きさによって700円)!」kuji2013-39
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じぇ!じぇ!じぇ!じぇ!じぇ!kuji2013-41
「寒いでしょ」と魚汁をサービスで配っていた。沖合は世界三大漁協の一つに数えられる好漁場。サケを始め、マグロ、カツオ、サンマにサバ、イカなど、多数水揚げされる食材の宝庫なのだ。明治初頭、遠洋漁業が発展する中で、男たちが何日も家を空けるようになると、女性たちも畑仕事の合間に海に出てアワビやワカメ、コンブを採り、換金するようになった、というのが、ここの海女の始まりと言われている。kuji2013-42
漁師の旦那が捕ってきた魚を調理したという魚汁。心身に染み渡って美味しかった〜。(陸上にいても風が非常に冷たく寒かった……)kuji2013-43
「うふふふ」kuji2013-44
高校生海女クラブの娘たちに、接客を任せている間に、心底から冷えきってしまった体を温めてくれる「お風呂」へカスリハンテンのまま飛び込む。「おいで!」と私も風呂場に引っ張り込まれる。「ここで話をきいて」と忙しい中、私の取材に応じてくれた。kuji2013-45
小袖海岸周辺の海は、海岸段丘となっていて、地形が複雑な上、外洋に面している。そのため波や流れも複雑である。操船しながらの操業よりも、潜った方が効率が良い水域では海女が、それより沖合いの海域で漁船を用いて男の漁師が漁を行うという「男女による住み分け」が出来たという。「私達が子供の頃はもっと遊べる(自然)海岸が沢山あったんだけどね、みんな爆破されて道になったのよ」道路が整備され、市内と集落の行き来もずいぶん楽になったそうだ。けれども、子どもたちが遊べる海が少なくなり、幼い頃からの海への親しみが減り、地元の若手後継者の減少に繋がったのではないか、とも話されていた。kuji2013-46
「海岸線に則した道を辿り、この目で色々と見て帰りたい」と思い、車をゆっくり車を走らせて帰ることにした。浜に打ち付けられた大量の海藻は、昆布!? 「3・11の後、異常に昆布が増えてさぁ。潮の流れが変わったのかなぁ。」と、「岩手のことをよく宣伝よろしく」おじさんはニコニコしながら教えてくれ、大量の干し昆布をお土産に、と持たせてくださった。写真の右下にある[i]マークをクリックすると説明を読むことができます。