toba2013-01
海人に憧れ沖縄に移住した私は、海辺で生きる様々な人と出会ってきた。「男は海へ、女は陸で子どもを育て、祈り待つ」という男女の領域の世界が存在する沖縄の漁村集落のあり方を素晴らしく思う反面、女が何故潜らないのだろうかという疑問が大きくなっていった。自ら母になった時「海女さんに会いたい!」と飛び立った先が志摩半島。日本一海女の多い地域だ。toba2013-02
海女と言っても、所変われば様々である、ということを知るようになったのは、2011年に、三重県の海女(鳥羽市、志摩市)の海女さんを集中的に撮影させてもらった時にだ。三重県志摩半島の28地域に、約1000人の海女が居る。日本に点在する海女の約半分がここに住んでいる。夏の間、志摩市に家を借り、景観の違い、人の違いを、肌で感じながら、海女さんを撮らせてもらった。そして今、私が日本全国と済州島の海女を撮影する際のベースとなっている。toba2013-03
伊勢神宮の神様にお供えする神饌(しんせん=神様の食事)の代表格は鮑。のして干し、そして繋ぐ。およそ2000年もの昔から、「熨斗鮑」をこしらえる役目を与えれてきた鳥羽の国崎に暮らす人々と海女。年が明け、新年初めに海に潜る日(口開け)の神事が行われる。toba2013-04
海は私達に沢山の自然の恵みを与えてくれるが、一歩間違えば、死につながる危険な場所。海女さんたちには自分たちの身を守り、豊漁や安全を願う、様々な信仰があります。toba2013-05
御潜神事(みかづき)再現じぇじぇじぇ〜っ! 白装束に木桶を持つ、昔ながらの格好の海女100人が、海に潜ってアワビ採取。アワビを干して薄く伸ばした「熨斗鮑」を約2千年前から奉納している三重県鳥羽市国崎町で、その原料であるアワビを摂る「御潜神事」が再現された。toba2013-06
toba2013-07
素潜りして採ってきたアワビを、海面で披露すると、見守っていた大勢の観光客から歓声が上がった。toba2013-08
私にとっては、2年前にから今日にかけて、志摩半島で撮影してきた海女たちと再び会える機会ともなった。toba2013-09
海は海女の畑。鳥羽市神島で6月11日に行われる島の海女の口開け(操業開始)の神事「御供上げ(ごくあげ)」。海にお米を撒くのは、海の神様にお供えをするとともに、漁場に「種をまく」ことを意味する。海藻に肥やしをやって、鮑やサザエの餌が豊かになり、豊漁になることを祈願する。toba2013-10
その年の大漁と操業安全を願った後、海女たちは海に潜ってアワビを採ってくる。この日に水揚げしたアワビは一部竜宮さんと荒神さんに供え、その後に戴くのだ。toba2013-11
toba2013-12
島での暮らし。神島のほとんどの主婦が海女業をやっている。けれども海女の漁期は短い。海へ入らない時には、畑へ行く。おばあさん曰く「島は仕事が少ないでしょ。畑仕事くらいしか無いから、若い人は出て行ってしまうよ。」toba2013-13
おばぁさんの畑でとれた青々した香りに包まれたきゅうり。肥料は、海の海藻など。toba2013-14
toba2013-15
志摩半島の海岸線は出入りが激しい沈降型で、それが美しい風景を生み出している。山があって海が広がり、風光明媚のその景観に毎回目を奪われる。海女の仕事は海に潜ってアワビ、サザエ、海藻などの海の幸を摂ることだ。けれどもその前に、子どもに朝食を取らせ、旦那を送り出し、野良仕事を済ませてから磯にでます。海女漁の無い日には、旦那の漁に同行したり、地域業にの手伝いをしたり、農作業もする、とっても働き者の女性たち。toba2013-16
冬は、波も空気も冷たく硬い。夏場には飛び交う海上でのおしゃべりもほんの少し少なく、海面に響き渡る磯笛も寒々しい。toba2013-17
海中林は様々な生き物を育んでくれる。透明度の高い冬の海で、ナマコを探す。「水が冷たくならないと出てこないんだよ」toba2013-18
頭にかぶっている白い頭巾やウエットスーツのフード等に描かれた星形の印はセーマン、格子状の印はドーマン。星は、筆書きのため魔が入れない。格子は多くの目で魔物を見張る。危険から身を守ろうという海女さん達のおまじない、toba2013-19
疲れて冷えた身体を温めてくれる海女小屋の焚き火。午後の仕事(素潜り漁)に供えて、その火で、餅を焼く。体力勝負の仕事だもの。おばぁちゃんでも、3つくらいはぺろり。toba2013-20
鳥羽市石鏡の海女が、その年のはじめに、八大龍神様へ操業安全と大漁祈願をするお祀り「潜り下り(かずきおり)」。toba2013-21
龍神様の掛け軸を飾り、お餅を供えて祈ります。toba2013-22
水は命の源です。toba2013-23
「魚食も元気の秘訣」toba2013-24
リアス式海岸の複雑な地形が特徴的な志摩半島、特に石鏡地区は半島の北東部、伊勢湾の湾口を出外れたところにあり、海上を北進すると渥美半島の先端伊良湖岬に突当る位置関係にある。変化に富み、地域の漁場特性を生かして多種多様な漁業が営まれている。toba2013-25
村の共同作業「ヒジキ刈り」の朝。女達(海女)はウエットスーツに着替え、男はカッパを付けて、船やクレーン車を手配する。toba2013-26
いつも元気で明るい海女さん達。自然の恵みを頼りにする故に、捕りすぎないための様々な約束事も多い。toba2013-27
女はカマでヒジキ刈り。男はそれを網に入れ船で港まで運びます。ここでは男はサポーター。海に潜って(浸かって)仕事をするのは「女」なのです。toba2013-28
海水を含んだ海藻は、ずっしりと重たい。toba2013-29
陸に上がったヒジキ。北風と太陽が、ヒジキの水分を飛ばし、見慣れた細いヒジキにしてくれる。toba2013-30
「一呼吸」で「生」を繋ぐ素潜り漁。息を吸って、海に潜り、限界ギリギリまで息を使いきって潜水作業を繰り返す。toba2013-31
逆らうことが出来ない海に身をおき、生き物を食べるために(お金に変えるために)捉え、人間が自然の一部であることを体感させてくれる仕事や暮らし。都市生活の中で忘れてしまった大切なことを思い出させてくれる大切なとき。学びたいことは、まだまだある。toba2013-32
写真の右下にある[i]マークをクリックすると説明を読むことができます。