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世界広しといえど、「海女」がいるのは日本列島と韓国だけ。2012年7月に韓国・麗水万博での「日韓交流・海女シンポジウム」で、講演をさせていただいた際に、お近づきになれた大学の先生にお誘いいただき、2013年度は2度に渡り、済州島の海女と出会う旅の機会を得た。感謝!感謝! 韓国・済州島は、人口は約55万人、面積は1,845平方キロ。そこに、およそ5千人の海女が居るとは、驚きだ。ちなみに済州特別自治道庁によると、1960年代には海女は約26,000人もいたという。jejudo2013-02
冬用ウエットスーツ姿。「風」と「石」と「女性」が多いという意味で三多島と呼ばれている済州島。海に囲まれているため常に「風」が吹いており、漢拏山の噴火により出来た地形はごつごつした黒い「石」が多く、昔、漁船に乗って海に出た男性が、台風に遭い死亡することが多かったため、「女性」が多くなった、と言われている。jejudo2013-03
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朝、畑仕事を終えてから来たのかな? 済州島南部は、韓国で唯一のみかんの産地。jejudo2013-06
朝早くから、海女小屋に集まり、海に入る身支度をしたり、お菓子やみかんを食べて、海に潜る前に栄養チャージ。jejudo2013-07
これが、チェジュ島(大坪里)の海女スタイル。jejudo2013-08
操業時間は、陰暦と潮で決められている。海女漁開始の時間が来ると、上軍のお姉さまを筆頭に海へ向かう。(済州島の海女は、深く潜れる順に上軍・中軍・下軍と呼称をつけている。)jejudo2013-09
「上軍」の海女は、深く潜れ、多くの漁獲を獲得できる。それは体力があり、経験が豊富で、それは技術と知識が優れている証。年を取り、力が衰えた時には、呼称を付けずに呼ばれるようになる。jejudo2013-10
ムルジル(海に潜って海産物を獲ること)開始! ちーかーも後を追いかけ海へ。ウエイトは、ヘニョのものを借りました。(水陸とも)ゴツゴツした岩が多く、足場を滑らせて手をつくのも痛いので、急遽雑貨屋で買ってきたゴム手袋を付けて海へ。上軍海女たちは、あのあたり……沖の「オレンジ色の浮き」の下を潜っています。jejudo2013-11
海中が黒いっ!!! 火山島である済州島の海中は薄暗い。jejudo2013-12
さっきのオレンジのおばさんだ! 海で出会っても、ニコニコ笑ってくれました!jejudo2013-13
下軍、そして中軍の海へと移動するとだんだん深くなってくる。ここの海は、まだ捉まるところがある。カギを使ったり、素手で崖おりるようにして、深場へ移動したり……。jejudo2013-14
さらに沖へ水面移動すると、海底が見えないほど、遠くなる。かなり沖へ出ても、透明度はあまり良くならなかった。(水の濁りは)隣の集落に10年ほど前に出来た火力発電所の影響ではないか、と先生は話していた。jejudo2013-15
海中の海藻は想像していたよりも少ない。漁獲物の多くが「サザエ」というのが納得できるような……。jejudo2013-16
「女に生まれるより牛に生まれた方がましだ」それは毎日朝早くから夕方まで労動するのが女性だったため、海女の間で言われること。jejudo2013-17
朝から入水し、上軍の海女たちは夕方近くまで潜り続けていた。一度も休憩も、食事も摂らずに……。潜って、採って、呼吸をしに海面に上がって、また潜る。jejudo2013-18
「アワビ採った!」喜んで私に見せてくれた海女。大きな身体をノビノビと海で泳がせ、自由でプライドが高く、情にあるれている、それが、私の済州島・上軍海女の印象。jejudo2013-19
漁を終えた人から、次々浜へ上がってくる。海の神様への信仰は済州島の海女にもあるそうですが、まじないをしてから海へ入ったり、魔除けを身に着けている様子はなかった。韓国と日本の海女は「神」との関係が違うようだ。jejudo2013-20
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冷蔵庫代わり?jejudo2013-25
「10000won……」jejudo2013-26
海女が潜水を終えた頃には多くの人が集まってきた。観光? ……では無さそう。地元の人が、海産物を海女から直接買いに来たのだ。jejudo2013-27
交渉に応じる上軍海女。きりっとした態度、姿勢がかっこいい。済州の海女たちが抗日運動の先頭に立って活躍したという歴史があるように、海で漁をするだけでなく、好奇心旺盛で、文化や社会など多方面に対する関心を持っているようだ。jejudo2013-28
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韓国の「ハワイ」と呼ばれる済州島も、島の中央に、標高1950メートルの漢拏山(ハルラさん)がそびえるという地形的要因等により、南北で風向きも風力も異なり気温差も大きい。「いつも風が強く吹いている」という印象の北側の海。(といっても2回目ですけど)jejudo2013-30
漁を終えた海女たちが、沖から次々戻ってくる。jejudo2013-31
すると、さっきまで輪になりお酒を飲んでいた男性達が背負子を背負い立ち上がった。jejudo2013-32
沖から戻ってきた海女。jejudo2013-33
海女は足ひれだけ持って、スタスタ陸へ上がっていく。jejudo2013-34
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ここでは男の仕事は「荷物を運ぶだけ」だと、教えてもらった。jejudo2013-36
その昔済州の女の子は10歳前後になれば海に入ってサザエやアワビ漁を始め、農作業を始める年頃になるとその途中で海に潜り、海から上がった後にもまた農作業をするといったハードな労働を繰り返してきた。だから海女の島・済州では「女の子を産むと豚を奉って、男の子を産むと足でおしりを蹴る」ということわざがあるほど女性の存在を尊ばれていると聞いた。jejudo2013-37
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「女は海へ、男は陸で待つ」jejudo2013-40
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「働かない男と、朝から晩まで働き続ける女」だからといって彼女達が不幸かと言えば、必ずしもそうではないような気がします。勇敢に一人、海へ潜り他の海女達と競争しながらも、皆で分ち合う食や暮らしの中で、誰にも媚びず自信に満ちた生き様がとても素敵に見えました。(済州島の海女は潜水中は一人です。一部の日本の海女のように、2人1組で潜ったり、トトカカ船のように船の上でお父さんが待つようなことはしないようです。)jejudo2013-43
同じ韓国であっても「陸地」(朝鮮半島)と済州島の「キムジャン」が、違っていたように……(海好きの私には、海系のチェジュの食が身体に合う!)。場所によって、海女の仕事も暮らしも人の気質も異なるのだろう。様々な「済州島の海女」の海を潜ってみたいと強く思う旅となった。写真の右下にある[i]マークをクリックすると説明を読むことができます。